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Most Impressive Case Report 2016.02 研修医A

Most Impressive Case Report 2016.02 研修医A

【症例】86才 女性

【現病歴】
2010年頃より腰痛の増悪があり、ADLが低下し外出する頻度の低下があった。
その後より日付がわからない少し前にしたことを忘れるなどの症状が出現し、Aクリニックよりアルツハイマー型認知症の診断となり、内服加療が開始された。
2013年頃、誤嚥性肺炎に罹患し、セロクエル内服後、意識レベルの低下を認めB病院に2週間入院したが、その後は症状再燃なし。
その後も小規模多機能ホームを利用しながら、Aクリニックを定期受診しフォローされていた。
2015年4月、グループホームに入所することになったため、往診導入となった。

【導入時処方】
アスピリン(100mg)1T/1朝
メマリー(5mg)3T/1朝
ロキソプロフェン(60mg)1T/1朝
ニューロタン(25mg)1T/1夕
ニフェジピン(10mg)2T/2朝夕
アローゼン(0.5g)1T/1眠前
クエチアピン(25mg)2T/2夕眠前

【生活歴】
ADL 車イス移乗可
初回往診時は床をはって移動していた

【家族背景】
夫:1991年交通事故後肺炎で死去
以後一人暮らし
長男、次男:近隣に在住
往診導入前は次男が週末を中心に患者ケアを行っていた。

【Problem list】
#1.アルツハイマー型認知症
#2.高血圧
#3.骨粗鬆症
#4.便秘症
#5.夜間せん妄

【往診導入後経過】

2015/4/17 初回往診
診察に協力的であるが名前は言えるが日付は言えない。
両側下腿に圧痕性浮腫が認められた。

9/4 夜間排便が頻回で眠気も強いため、クエチアピン(25mg)2T/2夕眠前→1T/1眠前、アローゼン(0.5g)1T/1眠前→プルゼニド(12mg)1T/1夕に変更した。

9/22 夜間不眠、興奮も強いため、クエチアピン(25mg)2T/2夕眠前に再度変更した。

10/5 夜間大きな声で叫ぶクエチアピン(25mg)3T/2(50-25)夕眠前に変更した。

11/12 排便-5dのためラキソベロン15滴+アローゼン(0.5g)1T内服したが排便認められず、臨時往診にてグリセリン浣腸するも排ガス排便少量であったため、
マグラックス(330mg)3T/3毎食後を開始し、排便を認めた。
以後マグラックス(330mg)3T/3毎食後+プルゼニド(12mg)1T/1夕にて排便良好であった。

2016/1/25 排便は1日置きであったが夜間不眠でせん妄症状も認められるためヒルナミン2.5mg不眠時頓用内服で開始した。

1/29 それでも不眠のためヒルナミン5mg不眠時頓用内服に増量した。

2/3 便が緩いため、2/8ヒルナミン10mg不眠時頓用内服に増量、マグラックス(330mg)2T/2朝夕に減量し以降良好な睡眠を得た。

【考察】

今回の症例では頻回な排便が不眠の増悪因子となっていたが、下剤の減量によって重症の便秘になったエピソードや、感染を契機として意識障害で入院となったエピソードが過去に認められていたため、単に睡眠薬を増量したり、緩下薬を減量するのではなく、複合的に薬を調整する必要があり、それが実際に功を奏した一例であった。
しかしながら、今後もこの患者では、睡眠薬および緩下薬の調整は不可避であろう。
ここで、グループホーム入所中の患者に対する訪問診療のメリットとして、一度にまとめて複数の患者を診るという往診方法ではなく、一回の往診では一人の患者を診察するという往診方法にすることで、頻回なグループホームへの往診を実践することができる。
患者や施設の介護士サイドからはわざわざ電話で相談するのはハードルが高い事も、別の患者への往診のついでに相談するということは比較的気軽にでき、この患者の場合、急性期の睡眠薬および緩下薬の調整は容易になるだろう。
また、対照的な睡眠薬および緩下薬の調整だけでなく、大建中湯、小建中湯などの漢方薬による体質改善やミヤBMなどの整腸剤による腸内環境改善による治療も検討の余地があるか。

【感想】

普段の病院業務では朝から夕方まで手術に参加し、病棟担当医の業務として合間の時間や夜間に約30人程の患者に診察、処方、指示出しを行い、阿鼻叫喚の日々であった。
ここあおぞら診療所新松戸では朝から夜まで1日20人弱の患者を訪問診療し、合間にかかってくる緊急callの対応の業務がある。
入院患者がおらず楽な仕事だと当初は思っていたが、全ての診療科の知識が必要であり、300人近い患者が自宅というベッドに入院していると考えれば、その業務の膨大さたるや尋常ではない。
たった30人の担当医の業務で疲弊していた自分の仕事の遅さを猛省する。また今回胃腸炎とインフルエンザに罹り、あおぞら診療所新松戸には多大なご迷惑をかけてしまったが、今後は油断せずにstandard precautionを心掛け、健康に気を付けて身体も鍛えたい。