Most Impressive Case Report 2016.05 研修医C Most Impressive Case Report 2016.05 研修医C 【症例】 11歳 女性【診断】 #1 溺水後低酸素性虚血性脳症 #2 非症候群性てんかん【往診までの経過】2012年2月自宅浴室で溺水。JCS300、一時人工呼吸管理となるも離脱。3月 気管切開術 退院後自宅にHOT導入しモニター入れる。筋緊張のコントロールとしてテルネリン5mg/day、レキソタン10mg/dayを開始。【生活歴】在胎38週2282g A市の産婦人科で出生。発達障害あり特別支援学校に通学中。歩行可能、会話は可能であった。【日常生活自立度】寝たきり度:生活自立(J2) 超重症児スコア 気管切開8点 経管栄養 5点 吸引 10回以上実施体交 特に決めていない知的障害は確定診断付いていない。療育手帳B1 身体障害者手帳 1級【家族背景】母40代 専業主婦 母方祖父母・叔母の協力が時々得られそう。父40代 自営業。休みなし。父は育児にあまり関わっておらず、関わりたいが術を知らない様子。父は頼りにならないと母は感じているが、関与してもらいたいと思っている。長女、次女。【医療デバイス】気管カニューレ メラ6CS月1回交換内筒は毎日交換 経鼻胃管 セイラムサンプチューブ 10Fr 38cm固定 HOT 3L SpO2 モニター ネルコア 吸引器 パワースマイル 吸入器 なし【医療資源】病院:J病院S訪問看護ステーション、リハビリ あおぞら【退院時処方】ビオフェルミン配合錠 1.5g 分3、 レキソタン細粒1% 10mg/g 10mg、 ムコダインDS50% 500mg/g 750mg、 ムコサールドライシロップ1.5% mg/g 25mg、 ビソルボン錠4mg 4mg/tab 3T、 フェノバール散10% 100mg/g 120mg、テルネリン錠1mg 100mg/g 5T 、 ガスター散10% 0.2g分2 、 ソリタT3配合顆粒 2包 分1 、 ラキソベロン1.4ml 分1 眠前、 ケンエージー浣腸 60cc 多数あり 【往診導入後経過】 2014/6/10 初診。筋緊張のコントロールのためフェノバールの調整を行っていた下肢を中心に緊張が強くがフェノバール単体でのコントロールは限界であり2014/10/27ボトックスを導入。筋緊張は改善傾向に合ったものの日中の覚醒度を上げたいとのご家族の希望もあり2015/8/18 フェノバールを減量、テルネリンを導入。2015/2/3 胃瘻造設術を施行。2016年4月 転校2016/5/17 ボトックス前でも筋緊張が落ち着いてきたため日中の眠気を押さえる目的もありフェノバルビタール・テルネリンを調整。 【スケジュール】 定期往診 月2回 【考察】 2016年5月個別支援会議要旨4月から転校。週3回通学を目標。医療ケア伝達できる10月頃までは母親同伴。日中学校での覚醒度を上げるため内服を調整した。入浴に関して:浴槽に介助者と一緒に入る方法は限界。骨折のリスクもある。通所先の入浴できるのは18歳からなのでそれまでの入浴方法を検討したい。今までは筋緊張を緩める目的で週6回入浴してきたが通学に伴い筋緊張低下、入浴回数を減らせるようになった。訪問入浴が週2回利用できるので夏場は自宅のお風呂場でシャワーチェアでのシャワー浴にする。この間に冬になった際の入浴方法を検討。足関節の腱切り術:足関節の腱切り術について母から質問有り。座る時のポジションや靴の選択をどうするか。靴などについてはリハビリが継続的に関わる。ご家族、施設の方への教育の重要性在宅医療では我々医療者が関わる時間は極めて限られており、患者の身の回りのことをしたり見守ったりする役割は家族や施設の職員に行って頂くことになる。医療者にとっては常識であることも、患者家族や施設職員にとっては未知の事態となる。熱を出した時も、どの程度であれば様子を見ていいか、風邪薬を使うのかどうかなど医療者であれば簡単に判断できることでも一般の方では判断ができず、病院を受診しなければならなくなってしまう。このような際電話相談で対応するなどし、またその都度教育を施していくことでご家族や施設の方、地域の医療レベル・練度が向上し、在宅の閾値を上げることに繋がる。前提となる地域の受け入れ体制また、在宅医療では前提となる地域の受け入れ体制によってどの程度のことが可能になるかが変わってくる。本症例で言えば訪問入浴サービスは全ての地域で利用できるわけではないなど、地域の協力体制によってどのように対応していくか、地域ごと、症例ごとに検討する必要がある。 【感想】 今回の研修では在宅医療の特殊性を学ぶことが出来た。在宅医療にも緩和ケア、小児重症患者、通院困難者など様々なニーズが有り、それぞれに固有の問題がある。在宅医療では家族や施設の方、地域の協力が不可欠であり、在宅診療所が継続的に関わっていくことで地域の医療レベルを向上させる必要がある。2042年には高齢者が人口の42%に達すると予想されており、災害と読んでも過言ではない。その対応は医療者のみでこなせるものではなく、在宅医療を介して地域全体の医療レベルを底上げすることが重要であると思う。