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Most Impressive Case Report 2016.06 研修医A

Most Impressive Case Report 2016.06 研修医A

【症例】 75歳 女性

【診断】
#1 気管支拡張症 #2 慢性腎不全 #3 左大腿骨頸部人工骨頭術後(2015/4) #4 Th12/L1圧迫骨折(2015/6/2 MRI)

【往診までの経過】
もともと気管支拡張症があり、2013年11月風邪をこじらせ急に呼吸苦が始まり入院した。気管支炎による呼吸不全から気管切開となった。一時人工呼吸管理となるも2014年6月に離脱した。酸素1Lの吹き流しで呼吸状態は良好となり、在宅療養が可能となり往診導入となった。

【既往歴】
子宮筋腫(手術)、腸閉塞(2012/12 緊急手術)、腹膜炎(2013/12 緊急手術)、腎性貧血(2014/8 輸血2回)

【日常生活自立度】
寝たきり度:B2 認知症の状況:Ⅰ 要介護認定の状況:要介護4 身体障害者:1級

【家族背景】
夫:唯一の同居人。加湿、吸引を行っている。いつも患者である妻に怒られている。けんかも多い。
長男:都内在住 これても月に1,2回程度。
長女:市内在住 2日に1回程度の訪問はできそうだが付き添い介護は困難。

【医療デバイス】
気管支切開後留置用チューブ(カフ付きチューブ吸引なし・一重管)コーケンネオブレス スピーチ10mm、
吸引器、吸引チューブ 12Fr 1日1本使用、
吸入器、
HOT 5L機 (日中1L/min 労作時2L/min

【医療資源】
訪問診療、訪問看護、訪問薬剤

【処方薬剤】
アムロジピン5mg 1T1x、ダイアート60mg 1T1x 、クラリスロマイシン200mg 1T1x 、フェロミア50mg 1T1x 、ランソプラゾール30mg 1T1x 、マグミット250mg 3T3x、ムコソルバン15mg 3Tx3、ブロチゾラム0.25mg  1Tx1、トラムセット配合錠 疼痛時、ラシックス40mg 1Tx1、エディロール0.75μg 1C1x、フォルテオ皮下注 20μg、ビソルボン0.2% 吸入液 1日3, 4回 1回で生食3ml ビソルボン2ml使用

【往診導入後経過】

2014/8/18 初回往診
2015/4/16 整形外科受診し左大腿骨頸部骨折と診断された。骨折は2014年秋頃と考えられた。
2015/4/28 左大腿骨頸部人工骨頭術施行。
2015/9/8 ニューモバックス接種
2016/1/8 酸素化不良あり肺炎疑いで入院。両側びまん性の肺炎像と、痰による左無気肺を認めたため抗生剤(フィニバックス0.75g 10日間)と補液にて加療された。
2016/2/15 常食全量摂取可、O2 2L/minまで改善し退院。
2016/3/18 気管出血ありアドナ3mg 3T3x、トランサミン500mg 3T3x内服し止血した。
2016/5/31 気切孔、口腔内に出血ありアドナ、トランサミン内服し止血した。

【スケジュール】

定期往診  週1回
気管カニューレ閉塞しやすく毎週交換している。

【考察】

気管支拡張症の予後を予測する因子について検索した。
在宅で長期酸素療法や非侵襲的換気療法を受けている慢性呼吸不全の予後と、呼吸状態、炎症所見、栄養状態の関係について調べたコホート研究があった。
呼吸不全の原因は気管支拡張症のほかにCOPD、拘束性肺疾患、混合性換気障害を含んだ637人を追跡した。
炎症の指標はCRP。栄養状態の指標はBMI、TTR(血清トランスサイレチン)。

累積生存率がBMI、TTRの値によって分かれることがわかった。
Clinical Nutrition 34 (2015) 739-744.
血清トランスサイレチンは採血で検査できることもあり、慢性呼吸不全の治療指標に有用であると考えられた。

【感想】

Most Impressive Caseに選んだ理由:往診して気管カニューレを交換する際、ご主人が吸引します。その手際が、とても慣れた感じで印象的でした。今月初頭のカルテでは、吸引すると出血し、吸引チューブを奥に入れ過ぎたと反省されていたのも人柄を感じられました。

気管支拡張症は、マクロライド系抗菌薬の長期内服により予後が改善したと習いました。病院を退院して在宅で診療・看護できるようになったわけです。今後も、医学・医療の進歩により予後が改善する病気が増えていくと考えられます。在宅診療・看護の需要もますます増えてくるとものと思われます。