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Most Impressive Case Report 2020.01 研修医A

Most Impressive Case Report 2020.01 研修医A

【症例】5歳 女児
【診断】急性硬膜外血種術後、Fanconi貧血
【現病歴】A病院
2016年 低身長を契機に受診し血小板低値の指摘
妹が生まれて受診途絶える
2019年
2月 マット運動後に頭痛、嘔吐、意識障害
A病院で開頭血腫除去術、減圧術施行
3月 自発呼吸の回復なく単純気管切開術
5月 Fanconi貧血に伴う輸血依存状態であったため
CVポート造設
7月 B病院に転院
2ヶ月リハビリ入院の予定であったが
7/29日意識障害、水頭症増悪ありA病院に転院
8月 オンマヤ槽チューブ抜去、VPシャント術
上記処置と抗菌薬で髄膜炎コントロール良好
CV交換せず
9月 発熱ありVPシャント感染の疑いで抗菌薬加療
10月16日 A病院から退院。

【出生歴】在胎39週 2305g 仮死なし
【既往歴】3歳時に転倒して鼻骨骨折
入院中に尿路感染、髄膜炎、VPシャント感染
気道感染歴はなし
【生活歴】アレルギー:食品なし、薬品なし
もともと幼稚園に通園していた
【家族背景】父・母・妹(初回往診時11ヶ月)
【医療資源】かかりつけ医:A病院、看護ST
【栄養】経鼻胃管からラコール、ソリタ、週2回テゾン
【輸血基準】Hb〈6.5g/dl→RCC1U、Plt<2.0万→PC10U(ポララミン・プレドニン内服)、Neu<500/μl→グラン75μg皮下注
【医療デバイス】HOT(SpO2低下時に使用)、SpO2モニター、人工呼吸器、加温加湿器、気管カニューレ(カフなし)、吸引器、経鼻胃管、CVポート(右鎖骨下留置)
【薬剤】エナラブリル、ラミクタール、ガバペンン、セルシン、エビリファイ、リスペリドン、プリモボラン、バクタ、イトラコナゾール、ジャドニュ、ミヤBM、アトロピン、ノベルジン

【訪問診療導入後経過】

10月16日 初回往診。訪問看護、リハビリ介入開始。
全身状態は安定。
以降月に2回採血を行うが輸血基準満たさず経過している。

~考察~

【中途障害の特徴】
・自宅の環境が医療的ケアに適していない
・自責の念
・家族がケアに不慣れ、ケアの習得に時間がかかる
・児のことを話せる人が周りに少ない
【重症児在宅医療の特徴】
成人と異なり、NICUから直接退院する児も多いため家族の一員としての生活を0から築く必要がある
成長や発達をサポートする必要がある
医療依存度が高いことによる家族の疲労、きょうだいへの配慮が必要となる(人工呼吸児の介助者の5割が睡眠時間5時間未満、7割が断続的な睡眠しかとれていない)
入院先確保、成人科移行の問題
⇒①~④全て「家庭医」概念の重要性
必要な人・サービスを繋ぐ役割
【主な参考文献】
・実践!!小児在宅医療ナビ(前田 浩利 編)
・小児在宅診療の取り組みと運営(木実谷貴久、宮田章子)

【主な参考文献】

・実践!!小児在宅医療ナビ(前田 浩利 編)
・小児在宅診療の取り組みと運営(木実谷貴久、宮田章子)

①多職種連携と手技練習
・病院主治医、在宅医、訪問看護・リハ、訪問歯科、薬局、行政担当者などで関係者会議を開催する。
・手技練習では「手順や必要物品のリストがあるとわかりやすい」「手技だけでなく児の観察すべきところも教えてもらえてよかった」「サポート体制の安心感」などの意見。一方で「児や兄弟の面倒を見ながらで大変だった」「嫌と言えなかった」に対して配慮が必要。

②通学先の確保、側弯や呼吸機能の低下などへの対応
・通学時の母付き添い問題。医療的ケアは濃厚だが知的に問題のない児の行き場。
・医療的ケアの進歩により生命予後が延長
→中長期的に進行する合併症コントロール、受診の支援

③社会資源の利用、ピアサポート
・訪問看護・リハ、居宅介護(身体障碍者手帳は基本的に3歳以上で申請)、短期入所、放課後デイサービスなど。
・きょうだい同士が交流できる会。「自分が障害児のきょうだいであることは特別でないと思えるような環境」

④小児科患者の飽和、成人疾患への対応
病状が安定し長期間入院を要さなかった場合、緊急時の入院先確保が困難となることが多い。また悪性腫瘍で亡くなる割合も増加しており、小児科医が不慣れなことから発見の遅れにつながる恐れもある。在宅でどこまで治療するか話し合っておく必要。

【本症例の場合】

・A病院入院中より手技練習を開始したが、乳児がいることで時間的制約があった。乳児院に預けてから付き添いが可能となった。(両実家頼れず、経済的にも民間サポート利用しにくい状況)
・リハビリ病院を経由したこと、髄膜炎等で入院が長引いたことから十分付き添い期間得られた。
・事前にカンファレンスで連携行い、退院日より訪問診療・看護介入が開始された。
・基礎疾患から定期的な採血や輸血が必要な状態であり、訪問診療によって通院回数を減らすことができた。
<今後の課題>
・どの小学校に入学するか。母の付き添い負担
・父のケア参加、家族だけでできることを増やす
・乳児院に預けている1歳の妹をいつ引き取るか(7/2~)
⇒一旦生活が落ち着くと、更なる変更をしにくい

【研修の感想】

4週間研修させていただき、一番実感したことは患者・家族の多様性でした。病院にいると「患者さん」「その母」「その父」との印象が強く、ある程度キャラクターや社会的背景を意識はするものの、強い実感として感じることができませんでした。しかし自宅に往診に行くと、自宅の広さ、衛生環境、児のおもちゃなどがどれくらいあるのか、同居家族の存在などの情報が知ろうとしなくても入ってきます。普段の病院診療においてもそういった背景を考慮すること、背景を知るための努力をすることを意識していきたいです。訪問看護、リハビリでは実際にどのようなことを行っているのか知ることができとても貴重な体験でした。4週間では短いくらいで、またいつか帰ってきたいと思います。先生方、事務さん、ドライバーさん、スタッフの方々、ありがとうございました。