1)意志の尊重と治療のジレンマ
この患者様の場合、疼痛のコントロールのためのレスキューとしてオキノームが選択されていたが、できる限り服用したくないような様が見受けられた。
→ 本人の希望に沿うことが何よりであるが、どのような形が最も納得できるのかということを、具体的に把握する。どのような考えが服薬を妨げているのか、そこに誤解がないかどうか確認する。
また、バルーン挿入に関しても一度は拒否されており、できる限りのことを自分自身でしたいという意志が表示されている。
→ 治療の選択肢を提示し、利点・欠点を十分説明したうえで、患者様の選択の自由を奪わない。治療として正しいことも本人にとっては不快であるかもしれない。
2)キーパーソン
本人がキーパーソンとなっていたケースである。妻は口出ししづらい様子で、そのまま服薬管理や治療方針の決定からフェードアウトしていっていた。そのため本人の病態・状況について十分な理解ができておらず、「大丈夫なのか」と毎回医師に尋ねるなど、不安を見せていた。薬の管理や治療の選択を行うのが本人だけである場合、本人が判断できなくなった最終末期に決断ができなくなってしまう。
→ 癌末の方の在宅診療を行っていくうえで家族の協力は重要である。本人の意思を尊重しつつも、服薬管理や治療の説明を家族含めて行い、いい意味で家族を巻き込んでいく。また、本人の判断が厳しくなってきたとき、患者様本人の意思をくみ取ることができているようになっていなければならず、本人がキーパーソンであっても、家族が診療から外れるようなことは避けなければならない。
3)自宅で看取るという自覚
最期を自宅で迎えたいとはっきりとした意志の基、在宅診療に入る方と比べ、通院困難を理由に訪問診療が始まった家庭ではお看取りの自覚や覚悟が薄い。
→ 家族側が最後を迎える準備をしっかりできていなければならない。医療機関の中でも情報共有を行い、地域全体で一人の患者様とその家族を支えていく。
ご本人の弱っていく姿をみて、妻も診療に積極性がでてきたように感じられる。