在宅医療における覚醒度評価の指標としてBISモニター使用の可能性について
大脳皮質基底核変性症 (CBD) は進行性核上性麻痺 (PSP) と共に4 repeat tauが蓄積することによる生じる変性疾患である*1。中年期以降に発症し緩徐に進行し、前頭・頭頂葉症状と基底核症状に左右差がある点が特徴的である。本症例は51歳より抑うつ症状で発症し、12年程度の経過で寝たきりとなっている症例であった。
本症例の問題点として覚醒度が低下傾向であることが挙げられた。覚醒度は主介護者である夫の実感に依存しており、臨床的指標に乏しかった。睡眠の不足や興奮持続である程度のバイタルサインの変化が生じることが予測されたが、筋強剛が強く意思疎通困難となっており覚醒度は評価困難であった。覚醒度評価法のひとつとしてBIS (Bispectral Index) モニターの使用を考えた。BISモニターは現在麻酔科領域で鎮静レベルの指標となる簡易脳波モニターとして使用されているが、筋萎縮性側索硬化症における睡眠パターン検査指標として用いるなどの症例報告が散見される*2,3。本症例のような基底核変性疾患において筋強剛などのParkinsonismが高度となった症例において、BISモニターを使用し覚醒度が評価可能であるか検討の余地がある。
本症例のように意思疎通困難であり覚醒と睡眠の区別が困難な場合、介護者の介護ストレスは増大することが予測され、もし被介護者の覚醒と睡眠が明瞭であれば介護者の「やりがい」も生まれやすいのではないかと考えられた。
1) J Neurol Neurosurg Psychiary 2012; 83: 405-10
2) 日職災医誌 2004; 52: 35-363
3) 川崎医療福祉学会誌 2008; 18: 271-275