【本症例を選んだ理由】
・今回、最も印象に残った症例として発表させていただくのは、ご自宅で胃瘻チューブが抜けてしまった症例である。
・今回、ご自宅を訪問して、初日に非常に驚いたのが、ご自宅に高度な医療機器がたくさんあり、それを使いこなしているご家族の姿だった。
・24時間、高度な医療機器が必要な患児が自宅で過ごすには、訪問看護ステーション、在宅医療機関と緊急受診先病院との連携が重要になる。
そういう支援をうまく行え、連携の重要さを痛感したケースとして、本症例が印象に残ったので、今回発表させていただくことにした。
【胃瘻事故抜去について】
・胃瘻チューブが抜けた場合、2~3時間で瘻孔は縮小・閉鎖し、24時間で完全に閉鎖する
【胃瘻事故抜去の原因】
・患者自身がカテーテルを引っ張って抜去してしまう(自己抜去)
・バルーン破裂
・バルーンの固定水が抜けてしまって虚脱する
・体位変換や移動時、入浴時にチューブが引っ張られる
・(バンパー型の場合)長期の使用による内部バンパーの劣化
※ボタン型ではチューブ型より事故抜去の発生が少ないとされる
【胃瘻事故・自己抜去予防策】
・バルーン型では、固定水の定期的な確認と入れ替え(一般的には週1回、1週間に0.25ml、1か月に1ml程度減少する)
・定期的なカテーテル交換(一般的には1~2ヵ月に1回)
【胃瘻事故・自己抜去対策】
①緊急時に備えて夜間休日でも連絡をとれる体制
第一連絡先:訪問看護ステーション 第二連絡先:在宅医 第三連絡先:緊急受診の際のかかりつけ病院
②第一発見者は、栄養注入はせず(している場合にはすぐに止め)、抜けたカテーテルをバルーン上方で切断し、ゼリーを塗布し愛護的に瘻孔へ挿入する。入らない場合はサイズの小さいものを挿入する。それでも入らない場合には、瘻孔がふさがらないように吸引チューブなど細いチューブを挿入しておく。
③第一発見者は家族や介護者であることが多いため、事故抜去が起きたらどうするかのマニュアルを常備しておく。
【アセスメント】
・緊急時に備えて連絡をとれる体制ができており、訪問看護ステーション、あおぞら診療所新松戸、緊急受診の際のかかりつけ病院とスムーズに連携をとることができた
・抜去直後に吸引チューブを挿入し、胃瘻閉鎖を防ぐことができた
・固定水の定期的な確認がされていなかった
・前回、胃瘻交換から2カ月以上たっていた
・家族の手元にマニュアルはなく、家族だけの時に事故抜去が起きていたら対応が遅れていたかもしれない