【急性骨髄性白血病(AML)について】
・小児の急性白血病の約25%、年間約180人
・正常造血の抑制により、貧血による全身倦怠感・動悸・息切れ、血小板減少による出血症状、正常白血球減少による感染症状などが出現する。
・小児AML新規診断例の治療成績は、無イベント生存率が約60%、全生存率が約70%
・再発・難治例の全生存率は40%に満たない
【白血病の子どもの在宅ケア】
1.輸血
週に2-3回の血小板輸血、週に1回程度の濃厚赤血球が必要となる。輸血はCVラインから行い、そのために抹消ラインを確保することはしない。医師が開始し、開始後30分ほどは患者宅にとどまり副作用の出現に注意する。終了後に訪問看護師がラインのフラッシュ、血圧測定、状態観察を行う。
2.感染症のコントロール
白血病の末期には通常の白血球がほとんどなくなり免疫能は著しく低下する。可能な限り入浴し清潔を維持し、CVカテーテルの管理に十分配慮すれば在宅で生活できる。一方で外出の際には十分な配慮が必要。
3.長い治療によるストレス
白血病の治療は過酷で長期にわたり、その長い治療に耐えてきた患者は医療的介入に強い恐怖心やストレス反応を示すことがある。受容・傾聴の姿勢を揺るがすことなくケアを行い、忍耐強く関わり、患者が受け入れることのできる対応を模索し、受け入れてくれる対応を手がかりにして介入を進めていく必要がある。
【本症例について】
AMLの末期で予後2,3ヶ月と考えられる。訪問診療開始時ADLは良好で自覚症状は掻痒感のみであった。骨髄抑制のため頻回の輸血を必要とし、発熱時には抗菌薬投与を行った。往診中、患児が寝ている間に両親の思いを聞くことができた。できるだけ家で過ごしたいという思いは一致しているようであったが、父は家にいることが逆に本人や母の負担となっていないかを心配しており、退院してすぐに発熱した際にはとても焦ったという発言もあった。母はもともと看護師であったこともあり覚悟ができているように見えたが、今後患児の体調が悪化し変わっていく姿を姉妹に見せることへの不安や、2年間の治療で患児にかかりっきりになったことでママ友と疎遠になってしまったことなど、より先の生活に不安を抱いているようであった。
訪問看護に同行した際には姉妹で仲良く遊んでいる様子を見ることができ、幼稚園のイベントも楽しんだようだった。姉妹には予後のことは伝えられていないが、知りたいと思ったタイミングでそれぞれの年齢や理解度に合わせて患児の病状や現状を説明し、決して疎外感を与えないよう、また不安を増大させないよう配慮する必要がある。
子ども、親、家族らしくいることを支えるために、関連する職種が連携し、葛藤するご家族に寄り添うことが大切である。