#. 原病による肺動静脈瘻(PAVM)の悪化
先天性角化不全症の原因遺伝子として、PAVMや間質性肺炎が急激な経過をたどりうると知られているTINF2遺伝子のR28Hヘテロ変異を認めている。主治医のA病院では、コイル塞栓など治療可能な病変は認めず、肺移植の適応と判断されている。肺の状態は好転することはなく、風邪などの軽微な感染を契機に、階段状に悪くなることが予測され、次は呼吸不全となり致命的な経過となる可能性もあると言われている。肺移植をしない場合の予後は半年程度と予想されている。
一般に、肺移植の成績は周術期死亡率 5-10%、先天性角化不全症の肺移植後の5年生存率は57%、10年生存率は30%。死因は肺合併症 10-15%、悪性腫瘍 10%。生存年齢の中央値は49歳。
#. 脳死/生体肺移植の時期
両親は退院当初の患児の状態の「いい時間」を出来る限り過ごさせたいとの希望で、脳死肺移植を待機、あるいはドナー待機困難な状態となったら両親からの生体肺移植を行う方針としていた。一方で、肺移植の安全性を少しでも高めるためには全身状態が悪化していない今の「いい時間」を削って実施する必要があるという側面がある。両親は生体肺移植を覚悟はしつつも、脳死ドナーが出現する可能性も含めて「待てるならば」可能な限り移植は先送りにしたいと考えている。
脳死ドナーの平均待機期間は2年5か月であるが、コロナ禍で脳死ドナーが減少している。現在待機から半年経過した時点である。
#. 急変時の対応
現状として呼吸不全、急変のリスクがあるなか、移植の方針などが定まりきっておらず、対応を考える必要がある。
#. 家族のサポート体制
生体肺移植となった場合、両親が入院する期間が必要なことに加え術後の身体的負担も大きい。母方実家は遠方かつコロナ禍のため、父方実家は治療中のためサポートを得るのが困難な状況である。また外部のサービスの導入についても同胞は抵抗を示している。
#. 本人へのインフォームドコンセント
肺が悪いことは理解しているが、詳しい説明は聞きたがっていないとのことであったが、2月12日のA病院受診の際にCLS(チャイルドライフスペシャリスト)に「今まで自分の希望がとおったことはないから今度も移植するって言われたら受け入れるしかないでしょ」という気持ちを吐露している。