【 Hirschsprung病について 】
・腸管の壁内神経節細胞が先天的に欠如し、便秘、腸閉塞症状をきたす
・Hirschsprung病は約5000人に1人の割合で発生し、全体の男女比は3:1から4:1
・全結腸以上は全症例の9%、さらに小腸型は2.9%
・兄弟での再発リスクは短域型の場合は約3%、長域型の場合は最大で17%とされている 。兄弟姉妹の再発リスクは女性の場合に高く、また複数の家族が罹患している場合にも高くなる。
・診断は臨床症状と直腸生検によって確定
・無神経節腸管の切除と肛門への吻合が根治術、全結腸
以上ではTPNや小腸移植も
【中心静脈栄養(TPN)の在宅管理について】
積極的な医療の関与が必要!
・最も注意すべき合併症は感染症
・フィルター付き「TPN専用ルート」を使用すべき
・フィルターは薬剤との相性があるため、薬剤師との連携が必須
・TPN用ルートの交換は無菌操作であり、医療者が積極的に関わっていくべき
・混注で使う針はなるべく細いもの(21G以下の太さ)を使う
・既製のTPN製剤は成人用であり、ベストではない
・TPN製剤は薬剤師がクリーンベンチの中で無菌的に調製→対応できる薬局が少ない
・訪問看護師の役割:手技を「在宅流」に噛み砕き、再構成、専門用語と専門知識の翻訳者、処方や調整・投与速度の確認、混注やルート交換の指導
・在宅医の役割:処方や調整、投与速度の確認、TPNに対する相談にのる、経腸栄養への移行などの提言
・薬剤師の役割:TPN製剤の調製、必要に応じ在宅まで配送、薬剤管理の指導
【本症例における訪問診療の役割について】
・家庭と主治医をつなぐ
CVカテ感染や残存腸の感染などで何度か入院加療している。状態悪化の際には在宅医として入院での加療が必要かどうか判断し、主治医と連携する体制を整えておく。
・家庭と学校をつなぐ
ご本人はとてもしっかりしていて現在少量だが経口摂取もできており、小学校の普通学級に通っている。修学旅行を看護師付き添いにするかどうかの相談もしており、今後のイベントに本人が積極的に参加できるように在宅医としてサポートする必要がある。
・健常児の兄弟への配慮
妹は同疾患で当院で介入しているが、弟は健常児である。兄弟2人が医療的ケアが必要なことから健常児である弟が日常で孤独感や寂しさを感じている可能性がある。往診の際に弟にも話しかけるなど配慮が必要。
・思春期への対応
今後、中学高校と進学し思春期を迎えるにあたり、ご本人だけとの時間を設けることも重要。秘密の保持を約束し、合意を得たものや危険がある場合は保護者に伝える。