【 水頭無脳症について】
・水頭症は、過剰な量の髄液が集積した状態であり、脳室拡大や頭蓋内圧亢進が生じる。
・水頭無脳症は水頭症性無脳症とも呼ばれ、両側の大脳半球がほぼ完全に欠損するが、小脳と脳幹は正常で、髄膜や頭蓋骨も正常である。
・嘔吐、けいれん発作や知的障害がみられる。
・治療は支持療法が基本であるが、頭囲拡大に対してシャント術が行われることもある。
【現在の問題点】
・両親のコンプライアンスの問題
両親は外国人留学生であり、日本語の理解にやや難がある。電話で両親と意思疎通を図ることは困難。病院受診時も医師の説明を理解できなかったと。今の気持ちなどを両親に尋ねても、大丈夫大丈夫と言い、なかなか本音を話そうとしない。
・金銭面での問題
現在の家族の収入源は、父親のアルバイトと実家からの仕送りという状況である。生活保護は永住権がないため申請できない。
・家庭環境の問題
両親は就学ビザで来日しており、母親が育児のために学校を辞めると日本にいられなくなってしまう。10月からは母親の学校が始まり、通所施設の利用などについて検討が必要。
【本症例における在宅医療の役割】
・親子と他の医療者、生活支援をつなぐ
両親ともに日本語の理解に難があり、日本語が得意な友人もいないとのこと。両親を介した他の医療者との意思疎通は難しいため、ノートなどを活用して他の医療者と在宅医で連携し、治療に当たっている。また先手先手でサポートをしていかないと孤立してしまう可能性があるため、どのような支援が受けられるかを提案することなども求められる。
・両親とともに治療方針を決めていく
当初は看取りが前提での在宅医療導入となっていたが、もともと考えられていたよりも長期の生存が見込めると考えられ、育児も含めたケアに切り替えていく必要がある。シャント手術についても両親の理解が十分でなく、病院受診の機会も少ないため、両親と接する機会の多い在宅医が今後の治療方針等についての意向を確認し、決定する手助けをしていく必要がある。